2011年6月12日日曜日

セントバーナードは現在も遭難者救助犬なのか?

Bangkok post記事翻訳)


スイスアルプスの高地にある俗世から切り離された彼の修道院から、セントバーナード犬がいなくなる日を想像できるかとたずねられても、ジョゼ修道士は感傷的になることはなかった。

3世紀の時が経ち、しばしばその首にラム酒入りの樽を身につけて描写された象徴的な救助犬は、ヘリコプターと現代技術にその道を譲った。

「(セントバーナードがいなくなっても)、私たちは700年も犬無しでやってきたのですからね」と、彼は語った。「私たちの修道院は1000年の歴史があります。その私たちが犬を飼い始めたのは、まだたったの300年前のことなのですよ」

長い間にセントバーナード犬は、海抜2,500メートルにあるこのサン・ベルナール修道院と同義になった。セントバーナードはこの雪の高地で修道士を案内し、遭難者や道に迷った旅人を救助したのだ。

スイスアルプスのグラン・サン・ベルナール峠に到着後、
雪上でポーズするセントバーナードのケイティ(左)とサルサ(右)。
2009年の6月4日。ロイター通信。


この修道院は、125年前に“スイスの国犬”として洗礼された、偶像視されているこの犬種の血統を確かにしたことで感謝された。

しかし今日では、この犬種はもはやこの修道院で常時生活してはいない。

5年前、修道士たちはセントバーナードの交配プログラムと決別することに決めたのだ。この修道院に残っている4人の住人と聖職者本来の仕事に集中したいと望む修道士たちにとって、これは大仕事だったのである。

1日の終わりに、犬たちの姿を思い出して辛くなることがあります」と、ジョゼ修道士は語った。

この修道院のセントバーナード犬舎を閉めるというニュースがスイスの銀行家や動物愛好家の知るところとなり、彼らはバリー基金という団体を設立した。

彼らのおかげで、修道僧ではなくこの団体の人間が犬を世話できる夏期の4か月間だけ、セントバーナード犬たちは修道院に滞在できることになった。冬季には、アルプスの麓、スイス西部のマルティニーの犬舎に犬たちは収容されるのだ。


セントバーナードと遊ぶ法王ベネディクト16世。
2006年7月19日、マルティニーにて。ロイター通信。


ガソリンスタンド、レストラン、そしてダムの防壁にまで、セントバーナード犬の顔とともにスローガンが掲げられている。スイスとイタリアの境界を超えるバスのための休憩所では、セントバーナードのヌイグルミ、マグカップ、灰皿、ポスター、絵葉書、そしてTシャッツが販売されている。

セントバーナードの特徴は、目の周りの黒っぽい縁取り、赤茶色の斑がある毛並みだ。オスのセントバーナードの体重は最大85キロ、メスのセントバーナードは70キロである。

元々、この犬は雪山にその体で跡をつけていたのだ。「セントバーナードはその体で小さな雪道を作ったのです。ソリを引く犬としても使われていました」と、バリー基金のアニア・イブナーさんは話した。

セントバーナードは、1800年から1812年にかけて生きたバリーという名前の伝説的な犬のおかげで世界的な名声を得た。バリーは40人以上を救助したと言われている。

地元の民間伝承では、バリーは疲れた旅人のためのアルコール入りの樽を首の回りに身につけていた。そしてあるときは、小さな少年をその背に乗せて家まで送り帰したという。

彼に敬意を表して、修道院は常にセントバーナードの1匹にバリーという名前を付けた。1年間に20匹のセントバーナードの子犬を繁殖させるバリー基金の犬舎でも、この伝統は続いている。

遊んだ後、眠る月齢8カ月のセントバーナードの子犬たち。
スイスのセントバーナード・ドッグミュージアムの飼育舎にて。


現代技術がセントバーナードの役割を変え、この犬種は今ではセラピー犬など他の仕事を引き受けている。退職者住宅を訪問する犬もいる。団体は、セラピー犬の訪問を強化していくと述べた。

バリー基金が保有している28匹のうち、雪崩訓練を受けているセントバーナードはただ1匹である。これすらも、実質的な訓練というよりは伝統としてものなのだ。

実際の捜査や救助活動では、ヘリコプターに乗せるためにより軽量で俊敏なアルザス犬(ジャーマンシェパード種)などが使われる。緊急事態において、アルザス犬の救助能力はセントバーナードのそれに容易に勝るのだ。

しかしバリー基金は、グラン・サン・ベルナール峠でのこの犬種の役割の伝統を風化させないことを約束している。「なんと言っても、セントバーナードはスイスの国家の犬なのですよ」とイブナーさんは語った。

山では、今でも修道士たちは時折救助活動に参加する。だが現代の機器が、かつては雪山での救助犬の代表格であったセントバーナードに取って代わった。

追憶に頷くようにジョゼ修道士は、彼のアバランチトランスミッター(※)が“バリーボックス”と呼ばれていると語った。

「それはどういう意味なのですか」という問いに彼は答えた。「それはね、“バリーの吠え声”という意味なのですよ」




(※)アバランチトランスミッターは、日本ではアバランチビーコンと呼ぶみたいです。
以下、http://bluecliff.jp/dougu/bcon.htmlからの引用文を掲載しておきます。
ビーコンとは、雪崩に埋没してしまった場合に遭難者を早期に発見するための、電波送受信装置で、もやは雪山の必須アイテムです。これがあると無いでは、捜索にかかる時間が大幅に違ってしまいます”以上、引用を終わります。


読後の感想:
セントバーナードは憧れの大型犬の一種なので、この記事は楽しく翻訳できた。自分が興味のある事柄について、新しい知識を得ることができるような記事はとても面白い。
私の犬友達は子供の頃からセントバーナードに憧れていて、家を新築したときに飼うつもりでいた。でも、知り合い経由で里親募集に関わって、結局一時預かりをした雑種の中型犬を引き続き飼うことに決めた。この犬は精悍で利発ないいコだけれど、なにぶん飼い主さんが穏やかで優しい人なので、イマイチ躾が入っていないのが玉にキズ……。もし彼がセントバーナードを飼ってくれていたら、憧れのセントバーナードとウチのコーギー連中が戯れる夢のような光景を見ることができたかも……と思うと少し残念。

英文記事:
Saint Bernards: Swiss national dog finds new role Published: 6/06/2009 at 12:57 PM
And the second-best museum is… APR 16, 2011 21:48 EDT
Saint Bernards: Swiss national dog finds new role By Hui-Min Neo (AFP) ? Jun 5, 2009
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jQaGanrcEKekKlvaByCRGUeQ0jgg