(Montreal Gazette記事翻訳)
東京のセラピードック訓練士の団体は6月中旬に東日本大震災の被害地域へのツアーを開始する。これは、人間に愛情と慰安をもたらすように訓練された犬たちと接することで、避難所で暮らす人々の役に立つことを目的としたものだ。
予定されているツアーは、国際セラピードッグ協会が5月1日~3日に宮城県の石巻と女川町を訪れて以来のものである。東京の中央区にある協会のメンバーによると、避難所の人々の中にはこらえきれず、犬を抱きしめて泣いた人もいたという。
今回は5匹のセラピー犬と6人のスタッフが避難所や仮設住宅を訪れる。協会は2週間ほどをかけて宮城県から青森県を周る予定だ。
5月に協会が避難所を訪れたとき、セラピー犬の再訪を望む避難所の人々の多くの声にスタッフは驚かされた。協会は少なくとも数年の間は、定期的に避難所を訪れる予定だ。
セラピー犬は、学習障害者や災害被害者と同様に、病院や介護施設、そして退職者ホームや学校などの人々を支援するために訓練された犬だ。現在国際セラピードッグ協会の会長を務める大木トオルさんによって、セラピー犬は1976年に日本に導入された。大木さんはアメリカ合衆国に滞在中にセラピー犬について学んだ。
国際セラピードッグ協会会長の大木トオルさんはアメリカで活動するシンガー。
彼はボランティアをしながら、アメリカでセラピー犬について学んだ。
協会のほとんどのセラピー犬は安楽死させられる寸前だったか、あるいは動物福祉センターから引き取られた犬たちだ。セラピー犬として認められる前に、犬たちは2年以上の厳しい訓練に耐えなければならない。
厳しい訓練を通過した優秀な犬だけが、セラピードッグになることができる。
協会には資格を有する31匹のセラピー犬がおり、他30匹が訓練中だ。現在の協会は、全国の老人ホームや介護施設を訪問する活動を行っている。セラピー犬たちは年間におよそ12,000人の人々と触れ合っている。
大木さんは1995年の阪神淡路大震災の被災地にもセラピー犬を派遣した。彼は(このときに)、避難所を出た人々がその後孤独死したり自殺を図ったりといった、多くの悲しい状況を聞き知った。
そんな悲劇を再び繰り返したくはないと大木さんは語った。
「もちろん被災者の人たちには、食糧や宿泊施設の供給といった実質的な支援が必要です。ですが、災害で家族を亡くした人たちには精神的な支援もまた必要なのです」
避難所の人たちは協会のセラピー犬たちを拍手で迎え、「次の訪問はいつですか?」とたずねつつ涙ながらに犬たちを見送ったと、60歳の大木さんは話した。
「セラピー犬たちがもたらす無私の愛は、津波の被害を受けた人々を癒す助けとなります。スケジュール的に厳しいのですが、私たちはできる限り被災者の人たちを支援したいのです」と、大木さんは述べた。
読後の感想:
最初この記事を読み始めたときはまったく失念していたのだけれど、記事を読み進めていくうちに、Toru Oki(大木トオル)という人物とセラピー犬というキーワードがきっかけで、だいぶ前に視聴したユーチューブの“日本初のセラピー犬、名犬チロリ”という動画のことを思い出した。
どんな内容かというと、虐待を受けて捨てられて安楽死寸前のところを大木さんに拾われたコーギーの血が入った雑種犬チロリが、その生来の優しい気質と才能を発揮して厳しい訓練を乗り越え、見事日本発のセラピー犬になったという実話の再現作品。
この作品、最後にチロリが病死するシーンで私は泣いてしまった。不治の病に冒されてさぞ苦しくて痛いだろうに、それでも大木さんの腕に抱かれたチロリの瞳の優しげな輝きや穏やかな表情は健在で、飼い主で命の恩人の大木さんと過ごした人生に満足して逝こうとしているのだなと、そんなふうに思えた……。
死の床にあるときですら濁りなく美しい、チロリの黒褐色の瞳が心を打つ。
この稀有な素晴らしい雌犬チロリの動画は、職業犬(働く犬)やセラピー犬に興味をお持ちの方には本当にお勧めの作品。ちなみに、再現映像ではチロリ役を愛らしいコーギーが演じているのも、コーギー好きには見どころのひとつ。
動画の中で名犬チロリの役を演じたコーギー。
このチロリの生涯を描いた動画作品の紹介記事へは下記のリンクからどうぞ。↓
英文記事: Therapy dogs bring comfort, affection to Japan's quake survivors
montrealgazette JUNE 11, 2011