ASIA NEWS MARCH 24, 2011 Behind Reactor Battle, a Legion of Grunts
日本の福島第1原子力発電所で炎と放射能と闘いにおいて賛辞されているのは消防士・自衛隊員・そしてフクシマ50と名付けられた作業員たちだ。
だが日本最悪の原子力事故を収束するための厳しい作業の多くが、原発産業の歩兵たちの肩にかかっている。彼らは、増大する放射能の脅威の中でパイプ搬送や瓦礫撤去や他の力仕事をサポートしている。
通常時、福島第1原発では数千人の作業員が日常の作業を行っている。現在彼らの多くがボランティアで、(特別な手当てもない)基本的な給与で、損傷激しい原発で作業している。
「怖いですよ」「でも、誰かが行かなきゃね…」と、トウカイ塗装会社の保護塗装作業者のタダ・ケンジ氏(29)は言う。
これらの作業にあたるのは多くが下請人である。(政府指定の)避難区域のすぐ外にあるサッカー施設に留まっている従業員は、外部の人間とほとんどコンタクトをとっていない。電話機能が不安定なのだ。
穏やかで感じの良い丸顔に黒メガネのタダさんは、原発のにいる同僚らは水を施設内に送るために必要なパイプの位置調整をしていると、電話を通じて聞いたとインタビューで語った。そして彼らはタダさんに、放射能のレベルはそれほど悪い状態ではないと話した。
従業員たちを福島第1プラントに送っている、原発の持ち主の東電(テプコ)と他の関係会社は、彼らに、事故の際の保障や障害保険疾病保険などといった特別手当や保障を与えてはいない。東電は、現在の緊急事態において、そのようなことを考慮している暇はないという。作業員たちもまた、そのような問題を口に出してはいない。このような非常事態のときにそのような金の要求をするのは馬鹿者であるとみなされるのだと彼らは言う。
「金のためにこの作業をしている者は誰一人いない」と、トウカイ塗装のイケダ・タダシ取締役は言う。多くの作業員は放射能漏れによって避難を強いられた地元民で、彼らは原発を正常な状態に戻すために協力することを強く望んだのである、と彼は付け加えた。
タダさんの月給は20万円で、日本人の平均給与の291,000円を下回る。「仕方がない。誰かがやらなきゃならないんだ…」と彼は語る。だが、母は彼を行かせたくはなかったのだ。
専門学校で建築を学んだタダさんのように、作業員の多くは高等教育を受けてはいない。彼らの持つ重要なスキルは原発環境に詳しいこと──それに加えて、月曜日には事故以前の基準値の3万倍ほどになった、1時間に2,000マイクロシーベルトという放射能レベルを超えた環境で働くことだ。木曜日の放射能レベルは、1時間に200マイクロシーベルトより少し多いくらいに減少した。
60人の主要作業員の一部は厳重に遮断された原子炉施設で起居している。原子炉冷却の命運は一部の作業員の働きにかかっていると、当初認識されていた誤解から、彼らはフクシマ50と呼ばれた。福島第1プラントの監督者に率いられたこの作業員の一団は、復旧作業の指揮、制御室の操業、そして原子炉の状態観察などを行い、彼らが施設を離れることはほとんどない。
他の作業者の消防士や電気系作業員は任務を完了し、より放射能レベルの低い場所に引きあげている。政府指定の避難区域のほど近くにある原子炉への前線基地となっているサッカー施設だが、福島県がその施設は避難区域内にあると主張する一方、防衛省は避難区域外にあると主張している。
水曜日に、テプコは330人の従業員を原発に送った。他224人の作業員はテプコの言うところの“協力会社”であるトウカイ塗装などから派遣された。
タダさんはこの業界の中間層に位置する従業者だ。この世界の最下層は日給で働く作業員で、トップは原発のオペレーターであるテプコや東芝、そして日立からの管理職や技術者だ。
日立グループはテプコの要請で120人の人々を派遣しているが、その多くが子会社の日立プラントテクノロジーからの派遣である。東芝グループは100人を送っている。テプコの子会社であるトウデン工業会社の下で働いているトウカイ塗装は、これまでに6人の作業員を、自発的な意思に基づいて派遣したとタケダさんは言う。「テプコは40年間私どもに良くしてくれた」「私どもはできる限りのことをしたい」という。
テプコの放射能の監督者は、彼らが日々作業員を送り出すその場所で指揮している。風向きの変化と不安定な原子炉からの放射能漏れは、その施設の放射能レベルが数時間の間に急変することを意味している。
作業員は防護服とマスクを身につけ、放射能環境での作業の訓練を行わねばならない。作業員はそれぞれ2つのバッジを、防護服の下のポケットに携帯している。それは被ばく状態を探知するものだ。この危機の期間中、それぞれの作業員に許された限界の総被ばく量は250,000マイクロシーベルトだ。この制限量は先週、“低被ばく”との境界であると考えられている100,000マイクロシーベルトから引き上げられた。
タダさんによると、原発内の作業員らは、5時間の作業で既に約100マイクロシーベルトの放射能に晒されたという。その被ばく量は1回のX線検査に相当する。タダさんの話では、彼はこの事故の少し前、4時間の作業で同様の放射線量に晒されたという。
楽観的な者などいない。福島原発近くの町から避難を余儀なくされた人々のシェルターとなったいる東京の北部の埼玉県のスーパーアリーナにいるオオイガワ・ミツヨシさんの息子は、原発での作業に戻ることを求められている1人である。オオイガワさんの話では、地震の6日後に電話がきて、彼の息子が2~3日間原発での作業に向かうことになった。それ以来オオイガワさんは、息子の携帯電話に連絡しようとしているが未だに繋がらない。彼は、放射能の曝露によって息子が病を得ないか心配している。
「息子のためにだきることは何もない…」「可能なら、彼の元に行きたい」とオオイガワさんは言う。
福島第1原発から20マイル離れたタムラの避難施設で、核防護装備メーカーの従業員も今週はじめに電話を受けた。第3原子炉へ放水するためのパイプの搬送と設置を行うことになるかもしれないと彼は言う。
タダさんと同額の給料取りの高卒の彼は言う。彼は、この任務の要請を断ることができると告げられたという。だが彼は、第2次大戦中に自殺任務を遂行した操縦士のように、自分は他者のために自身を犠牲にする運命にあるのだろうと考え、義務感でこの任を引き受けたという。もし参加要請の連絡がきたら、彼の言うべきことは「はい、行きます」という返答だけ──「私は、他人のために自身を犠牲にした”カミカゼ“に思いをはせているんです」「私の心は平静です」と彼は言う。
読後の感想:
この記事読んで、はじめて”フクシマ50”と呼ばれている人たちの実像が見えたような気がする。いくら普段はスカパーしか見ない私でも、さすがに震災関連の国内ニュースは見ている。でも、これまで政府とその周囲の記者会見や発表・マスコミの報道を見ても、現在世界的に知られるようになり、一部海外記事ではヒーローとも呼ばれている”フクシマ50”という人々のリアルな姿がまったくイメージできなかった。なぜ日本のマスコミはこういうの報道しないのかな? それとも私が知らないだけ? 東電とかマスコミのお得意サマだから? 何か日本のマスコミって、どうでもいいようなニュースにばかり熱をあげて過熱報道する反面、こういう記事のように、多分大勢の日本人が本当に知りたがっているけれど、何となくセンシティブ(?)な話題には手をつけようともしないで黙殺? 別に憤りとかそういう気持ではないけれど、ただ、本当に国内のマスコミってエキセントリックな気がして……記者クラブとかも……。