2011年6月24日金曜日

職場へ愛犬の同伴を禁止された英国会議員が逆ギレ

The Daily Mail記事翻訳)


保守党国会議員が、ウェストミンスター宮殿(英国議会の議事堂)への彼の犬の連れ込み禁止をくつがえすために人権法に訴えている。

ジャック・ラッセル犬のマックスを庶民院(英国議会の下院)のオフィスに連れてこないようにと告げられ、保守党国会議員マシュー・オフォードさんは驚くべき行動を行っている。

月齢6か月のジャック・ラッセル犬を自宅に連れ帰るために1週間の猶予を与えられたオフォードさんは話した。「これは馬鹿げた規則だ。マックスは人を害するようなことは何もしていない。彼は吠えないし、私のスタッフたちも不満などまったく口にしていない」

「もし彼らがこの禁止を押しつけるならば、私は人権法に訴えるだろう。なぜなら、彼らは私の個人的権利と家庭生活を脅かしているからだ」

活発なホワイトタンの毛色の子犬マックスは、彼の同僚議員たちからの反対もなく、41歳のオフォードさんとともに数週間ウェストミンスターに出勤していた。




ロンドン西北部ヘンドン出身の国会議員は、マックスを連れて来る前に議会の職員たちに相談し、個人的に許可を受けたと話した。

「私は彼を数か月間連れて来ている。犬を隠すようなことはしていない。私が職場に犬を連れて来ているということは秘密ではない」と彼は話した。

だが職員のひとりがオフォードさんのオフィスでマックスのバスケットを発見し、騒動が起きた。

この結果オフォードさんは、議員のオフィスを監督する庶民院上級議員のジェームズ・ロバートソンさんの挑戦を受けることになった。

オフォードさんは庶民院のジョン・バーコウ議長にこのペット禁止の取り消しを求めた。

ロバートソンさんは彼に、ウェストミンスター宮殿内への犬の連れ込みを禁じた1991年の法律を告げた。警察の探知犬、盲導犬、そして議会の敷地内で暮らすスタッフのペットのみが、この法律の例外である。

犬の立ち入りは禁止だと述べたウィップ・マーク・フランソワ保守党議員に反対されても、オフォードさんは引き下がらないことを明らかにした。

「彼は私に1週間の猶予を与えたが、私は従わないつもりだ。私の妻のクレアは日中マックスの世話ができないのだ」

「私は自分のためにではなく、マックスのために人権法に訴えるとウィップ氏に伝えた」

人権法は“個人または家庭生活”を管理するもので、この法律によって2009年にボリビア人移民が、ペットの猫の世話をするために彼はイギリスに留まる必要があるという理由で送還されずにすんだ。

議長にこの禁止の取り消しを求めているオフォード議員は、マックスのオフィスでの状況は、“職場における犬”に関するRSPCA (王立動物虐待防止協会)の指針に応じたものであると述べた。

「マックスはいかなる混乱も引き起こしてはいないし、きちんと躾られており、私は彼を規則正しい散歩に連れて行っている」と、オフォードさんは述べた。

オフォードさんとオフィスを共同使用している保守党国会議員のジョン・スティーブンソンさんは、マックスを連れて来ることを完全に支持していた。

騒動が勃発し、土曜日に“The Mail”誌の報道で、他の国会議員2人もペットを職場に連れて来ていることが明らかになった。そのうちのひとりは、旅行用の大型カバンにペットを入れてこっそり連れ込んでいる。

庶民院の広報官は、同僚のオフォード議員に議会の規則を思い出させてあげるようにロバートソンさんを促した。


読後の感想:
この国会議員に対して、イギリスの有権者たちはどんな感情を抱くのだろう? 反感、嘲笑、怒り、それとも動物愛護大国の国民としてはやはり共感なのか? そんなことを考えつつ読んでいたら、読者のコメントが300近くついていて驚いた。あまりに多過ぎていちいち読んではいられないがザッと目を通してみたら、中にはちらほらと共感の意見があったけれど、犬を飼っている人も含めてほとんどの読者の意見は厳しいものだった。
例えばこんな↓

“もしこの議員の言い分がまかり通るなら、グレート・デーンやコブラも職場に連れて行けるんだな“
”こんな馬鹿が私たちの国の政治に関わっているなんて“
”職場は私生活の場ではない“
“そんなに動物に囲まれているのが好きなら、動物園で働け“
“こんな連中が国の政治をしているのか? 犬は家に置いて来い、馬鹿野郎”
“本気で言っているのか?” “なんて馬鹿” “いますぐ議員を辞めろ”

職場でも愛犬と一緒というのは、犬の飼い主にとっては憧れかもしれない。日本でも事業主さんの中には、愛犬と出勤して従業員たちにも歓迎されているというような話を聞くことがある。ボスである社長をはじめスタッフがみな了承するならば、職場における犬の存在は “ストレス減少効果”や“活力・癒しのリソース”になると思うので構わないと思う。
でも議員は社長とは違う。議事堂のオフィスは彼の所有物ではないし、彼の給料は税金から賄われていて、国民の中には犬が嫌いな人や苦手な人が大勢いる。この議員さん、世間を舐めているおボッチャンがそのまま大人になってしまったとか?

英文記事: Commons dog ban breaches my human rights, says MP... and no, he's not the member for Barking By BRENDAN CARLIN and MARTIN DELGADO Last updated at 12:26 AM on 19th June 2011 http://www.dailymail.co.uk/news/article-2005374/Commons-dog-ban-breaches-human-rights-says-MP--hes-member-Barking.html?ito=feeds-newsxml


追記:
当記事を訳し終えた後にBBCで、“マシュー・オフォード議員は、法の保護を得るためや国外追放を免れるために利用する人がいる評判の悪いこの人権法に衆目を集めるため、彼のペットの犬を使ったことを認めた“という記述を見かけた。

 BBCの番組で、贈られた犬のぬいぐるみを膝に乗せて話すオフォード議員(右)。

犬のぬいぐるみを持ちながらオフォード議員に話を聞くBBCの司会者。

スクリーンには議員の問題の愛犬、ジャック・ラッセルのマックスの映像が。


これってつまり、この議員が”人権法に訴えてでも犬を職場に連れて行くのをやめない“というおバカな主張をしたのは、移民が送還を免れるためにこの法律を利用してイギリスに留まり、シリアスな犯罪を犯していることを憂いて、ペットを利用してあえて”バカ者“の演技をしたということ? ふ~ん、さすが元BBC社員、シナリオ作りがお上手。ひょっとして数か月前に犬を飼ったときから計画していたとか。目立つことをして名前を売りたがっている人なのかな。将来首相になったりして。
もしそうなったら、”イギリス首相の愛犬ジャック・ラッセル”関連の記事をこのブログに掲載できる……って、何年先? その頃はもうブログやめているかもしれないし。

参考動画: http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-13857819

2011年6月23日木曜日

ウェールズ王族とコーギーが暮らした王宮クランノグ

前回の記事“王宮跡からコーギーの骨。ウェールズ王族が愛した犬”の中に登場する、ウェールズの情報について少し解説。
この記事を訳している時、わけのわからない固有名詞がかなり出てきた。いつもなら固有名詞にはこだわらずに適当に処理してしまう。でも今回の記事の固有名詞は個人的に興味があって少し調べてみたので、その結果をご紹介。


クランノグ: 
古代ウェールズの住居だったクランノグ(人工の島)について。クランノグとは、スコットランドやアイルランドで湖水の上に建てられた古代住居のこと。ランゴース・クランノグは、ウェールズで発見された唯一のクランノグ。


こういう住居に古代ウェールズ王族とコーギーのご先祖たちが暮らしていたという。

なんだかガリア戦士っぽいお父さん。是非、斧と盾を装備して欲しい。


ランゴース: 
上記クランノグがあった湖がランゴース。ランゴース湖は南ウェールズ最大の湖。


ウェールズ、ランゴース湖の佇まい。


カーディフ:
ウェールズの古代王宮跡で発掘されたコーギー(タイプ)の犬の骨を調査したカーディフ大学の所在地。カーディフはウェールズの首都で最大の都市。





アングロサクソン・クロニクル:
古英語(こえいご)で書かれたアングロサクソン族の年代記。

昔読んだVOAの記事によると、古英語は現代英語とは違うので専門家にしか読めないという。英語が現在のものに近くなるのは16世紀シェイクスピアの頃かららしい。


参考サイト: 
ウェルシュ・クランノグセンター http://www.llangorselake.co.uk/crannog.html

王宮跡からコーギーの骨。ウェールズ王族が愛した犬

(BBC記事翻訳) 


カーディフ大学のエイドリアン・パウエル氏は”コーギーの骨”を調査している。

中部ウェールズで見つかった9世紀の骨は、王族に飼われた最初のウェルシュコーギーの証拠だと考えられている。

暗黒時代の遺跡を調査していたカーディフ大学の考古学者たちは、コーギータイプの犬の骨を発見したのだ。

ランゴース湖で調査を行っていたこのチームは、現代のイギリス王族に好まれているコーギーに似た外側に曲がった犬の前脚を発見した。

ウェールズ、カーディフ大学のパウエル氏が”コーギー”の骨を調査。


ブレコンに近いこの場所は、古代ウェールズ王国王族の住居だと考えられている場所だ。

カーディフ大学のチームは、ブレコンの第9代国王の住処だったと思われるクランノグ(湖の上の人工の島)で発見された人工遺物を詳しく調査している。

同大学のジャッキー・メルヴィル博士は述べた。「私たちはコーギーサイズの犬の前脚を入手しました。これは古代の王族のコンパニオンとして愛された犬の可能性があると、私たちは考えています」

ウェルシュ・コーギーと王族の関係は長い。

コーギー犬とイギリス王族の関係は長い。


「私たちはランゴースにあるこの遺跡の食物の残骸を調査しています。ここは初期王家の住居だったと私たちは考えています」

「発見された骨は、普通の大きなグレイハウンドタイプの狩猟犬のものもあります。ですが私たちは、コーギーに似た短いガニ股の前脚を発見したことに興味を引かれたのです」

「現代の犬種は最近開発されたものですが、発見された犬の骨はコーギーによく似ているようなのです。そこで私たちは、ウェールズにおけるこの種の犬の最初の例ではないかと考えているのです」

今日の王族と違って9世紀ウェールズの王族は、コーギーをペットとして飼っていたとは考えられてはいない。

「恐らくこのコーギーに似た犬は、当時のワーキングドッグだったのでしょう。コーギーは牧畜犬ですから」ジャッキー・メルヴィル博士はつけ加えた。

「この王宮跡では牛が飼われていたという証拠があるのです」

コーギー(Corgi )は、'cor' (dwarf) そして 'ci' (dog)で、ウェールズ語の”ドワーフ・ドッグ”という意味がある。

”コーギー”はウェールズ語で”ドワーフ・ドッグ”という意味がある。


メルヴィル博士はさらに述べた。「1200年間におよぶコーギーと王族との関わりの可能性に、コーギークラブはかなりエキサイトしていますよ」

コーギークラブの名誉書記シルヴィア・ヒューズさんは語った。「クラブのメンバーたちはとても興奮しています」

「コーギーと王族の関わりについてはかなり噂されてきましたが、これは嬉しいニュースです」

「多分コーギーは村の犬として育成されたのでしょう。この犬は器用ですから。そしてコーギーは素晴らしい愛玩犬でもあるのです」

「コーギーはとても賢く、人間が大好きなのです」

ランゴースレイク・クランノグ時代の年輪は、この住居が西暦889年~893年の間に建てられたことを示している。

アングロサクソン・クロニクル(年代記)には、西暦916年にランゴース付近がイギリス軍によって破壊されたという記述がある。

この遺跡からの人工遺物は2004年の9月まで、ブレコンのブレックノック博物・美術ギャラリーに展示される。


読後の感想:
訳している間ずっと、湖上の住居クランノグに暮らす古代ウェールズ王族とコーギーのご先祖たちの様々な情景が頭の中に浮かんできて、どっぷりと古代ウェールズの世界に入っていた。こういう記事を読むたびに、ますますコーギーという犬が好きになっていく(たとえ短足でガニ股な犬でも!)。
これは、このブログを始めて100本目の記事になる。やはり100番目のエントリーはメインコンテンツのコーギーと彼らの故郷であるウェールズ関連の話を掲載したかったので当記事を選択した。


英文記事:First 'royal' corgi bones found
Last Updated: Wednesday, 21 April, 2004, 12:33 GMT 13:33 UK